死神のお仕事
「殺す訳じゃないし、魂が求めてるのも分かってます。でも頭で分かっててもアレは…私には無理です」
「……」
「アレを食べるのは人間じゃない、人間には無理です。だってアレはもう、生きてる人間の心臓にしか見えない。あんなの、あんな物だと思って無くて…」
「まぁ、そうだろうな」
「…え?」
てっきり否定される物だとばかり…というか諭されるだろうと思ったから、同意する返事に思わず目を瞬かせてしまった。
キョトンと眺める先のサエキさん。彼は特に私の抱いた思いに対して不思議に思ってる素振りは見せなかった。
「元人間はみんな通る道だ。それで通り過ぎる道だ」
「通り、過ぎる…?」
「あぁ。結局食わない事にはしょうがないからな。元々の感覚なんて脳が覚えてるだけなんだし、そのうち気持ち悪さも無くなる…というか、忘れる」
「じゃ、じゃあ私も…」
「さぁ、どうだろうな。おまえの場合は人間が残ってるから、完全に死神の身体のそいつらともまた違うと思う」
「……」
「大体元人間は一口食べると意識が変わるんだ、身体が変わってるからな。だから無理に食べさせてみても良かったんだけど…おまえは違うからさ。それで食えなくなっても困るし」
「……」
「まぁ何にせよ俺には分からない感覚だよ。俺には美味そうにしか見えないし、食った方が効率良いのも知ってんし、食わないメリットなんて一つも無いからな」
「……」