死神のお仕事
不安と理由と安堵
「はい、じゃあ手を出して」
テキパキと準備を終えたアラタさんに促される通りに、私は腕まくりをした手を彼に向かって伸ばした。血管の位置を確かめるアラタさんの指先がなんだか擽ったい。
「…お医者さんだったんですか?」
スッと刺さった針は無駄に痛い…何て事は無く、彼のやけに慣れた手付きにふと尋ねてみた。すると彼は一瞬驚いた表情を浮かべつつも、「いや、そういう訳では無いんだけどね」と、少し申し訳なさそうに答える。
「こっちに来てから色々学んだんだ。やっぱり必要とする人も多いから」
「必要とする人って…他の死神さん、ですか?」
「そう。今じゃそれも僕の仕事の一つになってるかな。ね?サエキさん」
「あぁ、おまえしかやらないからな。普通のヤツはそんな事思いつきもしねぇ」
ふぅん、まぁ確かに、あの魂を液体にしようなんて誰も思わないかも…
私から繋がる管の先、ポタポタと落ちる液体は真っ赤な色をしていて、外から見ればまるで輸血でもしているかのようだった。
でも勿論、血液では無い。これが魂なんだと、先程準備をしながらアラタさんが教えてくれた。魂を液体化させる過程でどうやら時間がかかるらしく、今回は前もって作って置いたのを持ってきてくれたみたいだった。
…うん。アラタさんがこの方法を見つけてくれていて本当に良かったなと思う。