死神のお仕事
そして、「はいはい、じゃあ働き者の俺はせっせと働きに行きますよ」なんて文句を垂れながら、サエキさんはどこか楽しそうにリビングから出て行って…私はなんだか大きな溜息を一つ。
あぁ本当に、サエキさんは良い大人のクセに悪戯心みたいなのが過ぎると思う。
「…あかりちゃん」
アラタさんが、申し訳なさそうな声で私の名前を呼んだ。先程のサエキさんのせいで溢れた私の溜息を、悪い意味でとってしまったのか、眉尻を下げてしょんぼりしたように笑っていた。
「ごめんね…急に知らない奴と二人にされたら不安になるよね。しかも死神だし」
「え?あ、いえ、そんな…」
「後30分くらいで終わるから、そしたら帰れるからね。後少しだけ時間貰えるかな」
「あ、勿論です。勿論そんな、別に私はそんな事…」
…思って無かった訳では無いけれど…でも…
「…アラタさんは、優しいですね」
「…え?」
「なんか気が利くというか、穏やかというか…私が想像してた死神のイメージから程遠いです。変な人が多いみたいに聞いてましたし…」
「はは、サエキさんが言ってたの?」
「あ、はい。関わら無い方が良い、みたいな感じで」
「うん。まぁその通りかな。あかりちゃんはまだ人間だしね」
ーー“まだ”人間。