死神のお仕事


今、アラタさんはポツリとそう言った。死神じゃないという言葉も、半分人間だという言葉も使わず、まだ、人間なのだと。


「…やっぱり、段々死神になっていくんですか?」


…尋ねた私の言葉に、私自身ハッとした。


やっぱり、なんて。そんな言葉が頭についたのは、無意識だった。無意識だけど、気にしていた。もしかしたらと思ってしまったのだ、魂を目の前にした瞬間に現れた、知らない私を知ってしまったから。

だから帰って来た時もあんなにムキになって、サエキさんに突っかかった。人間で居るのは無理なんじゃないかとすごく不安になって、自分の中の人間と死神の境界線の位置が変わってきて、死神としての私の存在が思ってた以上に大きくなっていて、だから…


「…ごめん、不安を煽るような事言っちゃったね」

「あ…いえ。でもその…アラタさんって元々は人間だったんですよね?」

「うん。そうだよ」

「あの、だからその、聞きたいなと思う事が色々あって、良かったら教えて欲しいなと思うのですが…」

「うん。どんな事?」

「えっと、例えば…いつから死神になったのか、とか」

「いつって言うと…何年前に、とかって事?」

「いやあの、そうじゃなくて…その、精神的に、と言いますか…」

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