死神のお仕事


…どうだろう。元人間の人に対して面と向かってこんな事を尋ねるのは、もしかしたら失礼な事なのかもしれない。デリカシーが無いかもしれない。…でも、


「…いつから魂が食べられるようになりました?」


あんなに生々しくて、あんなにグロテスクで、あんなに人間を連想させるもの。


「いつからそんな自分が…許せるようになりました?」


…どうしても知りたい。私の中で、一番の線はそこだと思った。


きっと私の身体自体はあの魂を受け入れて、すぐにでも食べる事が出来るのだろうと思う。それはつまり私は死神だという事。でも私の気持ちが許さない。食べるなんて出来ない、食べたく無いと思う。そう思っていたい、なんて思う私は捨てたくない人間の私。

身体に引っ張られるように気持ちがそれを心から望み始めても、それを拒否する心が欲しい。それが、私が人間だという証拠だから。むしろそれしか私が人間である証拠は無いと、先程知った。理解した。だから…そこが知りたい。どんなに失礼になってしまっても、それを知って安心したいと思った。なんだか今は、漠然とした不安しか心の中に無かったから。


すると、アラタさんは笑った。そうだよねと、私の気持ちが分かるよと、そう言ってくれているような表情で、私に優しく…同情するように、微笑みかけた。

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