死神のお仕事
生きるというのは、前を向く事だと思う。
生きているというのは、前を向いている事だと思う。
生きる意味。生きている意味。そして、生きて来た意味。
自分の意味を貰った、救われたーーそう、アラタさんは言った。
でもそれと同時に役目を終えて、生まれて来た意味は無くなったのだともアラタさんは言った。
彼が死神になる事で得られた意味は、得られた瞬間彼の中では終わってしまったのだろうか。死神になる事、なった事自体が意味だったと、そう言っているのだろうか。
もう過去の物として、終えてしまったと告げる彼は遠くを眺めるような、そしてとても大切な物を慈しんでいるかのような目をしているように見えた。かつて確かにそこにあった、彼の意味を映し出して。
…だとしたら、なんでだろうと余計思う。
「でもアラタさんは…まだ死神なんですね」
意味を終えて死の瀬戸際までいった彼が魂を口にし、生き永らえた理由。死神としての生を受け入れた理由。それがどうも分からなかった。
不思議だった。別に文句を言いたい訳でも追及したい訳でも無い。ただ不思議に思ったのだ、あんなにも暗く深い死神の瞳に映す、人間のような感情を見たから。