死神のお仕事
そう、人間のような感情。
想いを抱いて生きる、人間みたいだと思った。生きる事、魂になっても尚、生に縋る人間のような力強さ。その一つが彼を支えて作り上げている。だから今、彼は居る。彼が生きている今、彼にはきっと理由がある。
私は確信していた。確信して、彼の瞳を真っ直ぐに見つめていた。私のその視線の先で、アラタさんはほんのりと漂わせる哀愁と共に薄っすら微笑みを浮かべてみせる。
「教えて貰ったんだ、サエキさんに」
「…サエキさんに?」
「そう。死神になる事の意味と、だからこそ死神の僕が為すべき事の意味。だから僕はまだここで終わっちゃいけないんだって、まだ一つだけ、死神になったからこそやり残した事があるんだって分かったんだ。だから今も死神として生きて、死神として働いてる」
まだ一つ…いや、あと一つ。
アラタさんの言葉は、そんな風に私には聞こえた気がした。彼の生きる中であと一つだけ、その一つの為だけに今生きているのだと。あと一つしか、彼をこの世に引き止めるものは無いのだと。
…なんだか、急にゾッとする。彼の瞳がやけに暗く、光の差さない奥深くで何かがぐるぐると渦巻いているような、そんな不穏な色に見える気がした。これはまるでさっきまでの物とは違う。これはきっとーー
ーー執着。