死神のお仕事
その言葉が一番近いように見えた。縋る想いを通り越して、執着している…そんな気がする。言葉にしたもの以上の何かが彼の中にある。だから大切に慈しんでいたそれが今、それ無しには成立しない程に彼の中を埋め尽くしている。
…死神。それはきっと死神で、人間とは違う。
今の彼を見て私はそれを実感した。彼は死神、もう人間では無い…死神に、なったからだろうか。だからこんな目をしてこんな風にしか意味を捉えられなくなってしまったのだろうか。
人間の生への執着とはまた違う…彼は生きているけれど自分の生に関しては何の感情も抱いていない。
執着心だけが彼をここに留めている、ただそれだけだ。
そこまでして大きくなっていった人間の頃の感情に、今の自分の生きる意味が寄りかかっている。そうしたのは自分だったのか、それとも死の淵から引き戻したサエキさんの言葉だったのか…何にせよ、彼はそうじゃないと生きられなかった。今ここには居なかった。
どうして死神になってしまったんだろう。どうして人間の頃には理由が見つからなかったんだろう。
人間をやめて死神になる事が自分の意味になってしまったくらい、死神としてしかもう意味を得られなくなるくらい、その大きな意味が生まれる理由…
「どうして…どうして死神になったんですか?」
「それが僕にしか出来ない事だったからだよ」
「誰の為に?」
「え?」
「一体、誰の為にアラタさんは死神になったんですか?」