死神のお仕事
…なんでここで、アラタさんなんだろう。なんで私がアラタさんの事を気にしているのが、分かったのだろう。
尋ねたサエキさんは、こちらに目も向けていなかった。ただ、それでも彼に私の今抱えてる気持ちがバレている、という事だけは分かる。
…サエキさんは、いつも変な所で鋭い。
「…はい。やっぱり同じで…でも、」
「でも?」
「…アラタさんの目には、何か映ってるように見えて…」
「何も見えない底無し沼なのに?」
「というか、それしか無い、って感じで…むしろそれが残ってた、というか…」
思い浮かべるアラタさんの目も、同じ死神の目だった。でも何も無い訳じゃ無い。たった一つ、それだけが彼の目には映っていた。残っていた。
「…きっと人間の頃の記憶みたいな、大切な物なんじゃないかって思ったんです。懐かしそうだったし…でも」
途中からそれは、形を変えていった。見え方が変わった。同じ物なはずなのに、そこから光が消えていった。
「…サエキさんは、何て言ったんですか?」
「何が?」
「アラタさんに、何を言って、どうしてあんな風に…」