死神のお仕事
“あんな風に生きる様に、したんですか?”
その問いが、私の口から出てくる事は無かった。それを口にするのが嫌だったというか、怖く感じたのだ。
きっと昔は宝物のような素敵な出来事として捉えられていたはずのそれは、今は彼をこの世に留めるための鎖としてしか存在していなかった。身体に、心に巻きついて離れない…まるで誰かにかけられた呪いのような。
執着という名の呪い。自分の命に対してでは無い。そのかつての宝物に対してのみに、彼は執着している。呪われているのだ。
「…アラタさんを死神にしたのは誰ですか?アラタさんがやるべき事って何ですか?」
あんなに暗い目を持つ死神は、人間とは感じ方も捉え方も違うのかもしれない。だからアラタさんがあんな風になったのは、身体が死神になった事も理由の一つなのかもしれない。…でも、
「サエキさんがアラタさんに教えたんですよね?死神としてやり残した事があるって。だから生きなきゃいけないって」
それが彼を引き止めたのは明らかで、それが悪いだけの事では無いと…それは分かってる。先程の水の話の時にサエキさんが言った、死神も同じ命だって言葉が蘇る。簡単に消えてしまって良い命なんて無い。どんな形であったとしても、命を全うする事は大事な事に違いは無い。