先生、甘い診察してください*おまけ短編集*
「あのっ、帰るねっ!長居したら悪いから」
バックを持って立ち上がった私に、彼方くんも慌てて立ち上がり「送るよ」と言った。
「ううん、1人で帰れるから。彼方くん、店番しなきゃいけないんじゃないの?」
「……そうだった。じゃ、せめて外まで見送る」
こうして、ケーキの試食という名目で彼方くんに会えて、しかも2人きりになれるのは嬉しいけど。
やっぱり、思うんだ。
「ねぇ……彼方くん?」
外に出て、彼の名前を呟くとニコッとしながら「どうした?」と顔を覗き込まれた。
その仕草にドキドキしつつも。
「新しいケーキの試食、今度からは、私じゃなくて……あやちゃんに、頼んだ方がいいよ」
震える声で、なんとかそう言った。
そしたら明らかに不機嫌な顔をされて、「何で?」と詰め寄ってきた。