先生、甘い診察してください*おまけ短編集*
「やっぱ、嫌?俺よりも、あの人の方が」
「え?」
「あ、いや……」
頭をぼりぼりかいて、彼方くんは眉を下げて困った顔をした。
私も俯き加減で黙る事しかできず。
完全に気まずい空気になってしまった。
「っ……ダメ、だからっ」
いきなり、彼方くんが微かに声を震わせながらそう言った。
「えっ……」
「あやじゃ、ダメ。夏依ちゃんじゃないと、絶対にダメだから!」
「えっ!それって、あのっ」
「夏依ちゃんだから、こうやって誘ったりするわけで……誰でもいいわけじゃなくて、つまり」
……真っ赤だ、彼方くん。
言葉もしどろもどろだし。
そんな彼が、少し可愛いって思った。