先生、甘い診察してください*おまけ短編集*
「他に虫歯はないけど、詰め物が取れた箇所は小さく虫歯になってるよ」
智也さんはマスクを外しながら、少々悲しそうに言った。
「嘘……」
「詰め物が取れたのはいつ頃かな?」
「忘れちゃいました……」
結構前な気がするけど、本当の事を言うのが怖くて誤魔化した。
「へーえ。忘れるくらいずっと前に取れちゃったんだね」
「ち、違います……」
「も~。すぐ言ってくれなきゃダメだよ~?」
フワフワ微笑みながら智也さんは軽く私の額を叩いた。
怒ってるつもり、かな?