小春日和
リンゴ飴と綿飴、それとレモンスカッシュを買って屋台を横目に私達はいつもの公園へ歩いて行った。
湊の手には私と半分こした綿飴と飲みかけのラムネがある。
公園のベンチに座り、お互いまずは綿飴から食べ始めた。
一口食べると、ふんわりと甘く溶けて下の上にザラリとした食感が残される。
串をもう1本貰い無理矢理作り出した湊の綿飴はかなり不格好。
大口を開けて食べていく彼の口の周りは、おそらくもうベタベタになっている。
昔からこれを食べるのが下手だったのを思い出して、笑いが込み上げてきた。
「…なんだよ。」
串を使うのが面倒になったのか、手掴みで食べてベタベタになった手を舐めながら、彼は私を眉間にシワを寄せながら見つめてきた。
けれど、表情とは裏腹に瞳がやけに優しい。
妹と仲直りができた兄のような顔。
時折彼が私に見せるこの瞳が私はとても苦手だ。
彼が前に私に言った「落ち着けない距離」と言うのを、こうゆう時に妙に意識してしまう。
水道で手や顔を洗って半袖で雑に拭く姿。
ふと視線を向ける瞬間に、目が合う瞬間に、異性を意識してしまうのは私がおかしいのだろうか。
少なくとも私は、彼との距離を意識するのはそうゆう意味の時なのだ。
ただ、さっき感じたことが本当に彼の本心ならば、私は彼に…
(ちょっと待って。私は……え…?)
まさか、そんなはずはない。
胸の中で広がる靄を晴らすためにレモンスカッシュを一気に吸い上げる。
彼もラムネを飲みながら私の横に座る。
私は彼のラムネの瓶の中でキラキラと輝きを放つビー玉を見つめていた。
再び目が合って、逸らした時に咄嗟に口をついて言葉が出る。
「…ありがとう、付き合ってくれて。」
言いたいことはもっと他にあるけれど、それはどれも喉の奥で詰まって出てくることはなかった。
「別に。付き合わせたの俺だし。」
彼も同じように沈黙を作りたくはないらしいが、取囲む重い空気に彼の言葉を発する意欲が負けてしまったようだ。
こうなったらもう、お互い面倒な駆け引きをしながら本心を引き出し合うしかない。
それさえ私達は決まりきったこと。
こうゆう時は私から話しを切り出す。
その事を知っているかのように、彼はチラリと私を見た後はラムネを飲むことを繰り返し始めた。
「ラムネって飲み難くて苦手だけど、中のビー玉が欲しくて昔はお祭りに行くと二人で一本飲んでたよね。」
「…あぁ」
「二人共どうしても取れなくて、湊は悔しがって泣いてたっけ…」