堕天使に降り注ぐ光
つい最近まで、陽菜はあたしの眼中にはなかった。

それなのに、可哀相な陽菜……。

2年になって初めて同じクラスになり、顔と名前だけは覚えた。

本当のところは知らないが、あたしの目には陽菜は『幸せな子』と映っている。

多分、両親は過保護な程に優しくて、母親は良妻賢母、父親は仕事熱心で家族思い。

きっと陽菜の部屋には誕生日に買ってもらったであろうピアノがあり、クリスマスプレゼントにはテディベアを貰っているような、幸せな家庭。


あたしとは無縁な家庭――


望んでも、手にすることは出来ない家庭、家族――


あたし達は住む世界が違うんだ。


陽菜は眩しくて、温かくて、甘い香りのする女の子。

そう、光りの世界の住人。

それに比べあたしは、どす黒く、冷たく尖った、卑しい匂いのする女。

闇の世界の住人。

陽菜が天使なら、あたしは堕天使。
< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop