君の声が聞きたい
2人で昼食を食べていれば、伸也は呆れた顔で指摘した。
「蓮。お前、いい加減ヘッドホン外せるようになれよー。」
「無理。」
「でもよ、いつまでもそんなんじゃ将来困るぞ?」
口調は軽いものの決してからかって言ってるわけじゃないのを知ってるから、俺はこいつを突き放せない。
でも、無理なんだ。
ヘッドホンを外すのだけは。
俺の両親は昔から不仲だったから、顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた。
それを聞きたくなくて俺はずっと耳を塞いでた。
今は父親と2人暮らしだが、その頃の記憶と加えてあの夢の記憶のせいで俺は音の処理がうまく出来なくなった。
病院に行っても、特に病気と言うわけではなくただの精神的なものだと診断された。
ボワーっと管に反響するみたいに音の渦に飲み込まれて、1人音の中に取り残されたような感覚。