君の声が聞きたい
ただ、ヘッドホンだけは違った。
ヘッドホンで周囲の音を遮断して、激しく流れるサウンドだけは俺の心を落ち着けてくれた。
それ以来、俺は周囲の音を遮断し続けた。
ヘッドホンを外せば、周囲の音に酔って強烈な吐き気に襲われる。
自分でも、ヘッドホンに依存し過ぎているのは感じてる。
でも、
「無理…なんだよ。」
俺の声が少しだけ歪んだ。
手に力が入る。
グシャっと音を立てて、先程までパンの入っていた袋が潰れた。
伸也が軽く息を吐く声が聞こえた。
「まぁ、ムリする必要もねぇよ。」
どこか切なそうに笑う伸也に、力が抜けた。
あぁ、とだけ返して俺は残りのパンも食べ尽くした。