君の声が聞きたい
優莉side
高校3年生にあがってから、立ち入り禁止のはずの屋上に何度か人の影を見た。
この学校は、西館・北館・東館とコの字になっていて南に運動場がある。
私を含める3年生は西館で、北館が1年、東館が2年となる。
そして人影が見えたのは私たちの館の反対側の東館、つまり2年の館だ。
横山優莉 yokoyama yu-ri。高校3年生。
生まれつき、右耳を失聴している。
加えて、中学2年の時に左耳が難聴になった。
目立たない様な補聴器を付けて、腰まで伸ばした黒髪で更に耳を隠している。
だが、補聴器を付けても今では殆ど何も聞こえないくらいに私の難聴は悪化している。
日常生活は、家族とは筆談だが友達には言い出しにくくて、なんとか口の動きを目で追って会話をしていた。
授業なんて、全く分からないから仕方なく独学で誤魔化している。
外を歩く時は、最大限に意識を張り巡らせていつも気が抜けない。
と言っても、生まれつきの右耳の失聴で周囲の動きには敏感になっているから今までなんとかなってきた。