君の声が聞きたい
午後の授業、私はヘッドホンの男の子の事を考えた。
案外、背が低かった。
女子にしては大きめの私は167センチ。
知っていたとはいえ、初めて間近で見た彼はずっと大人びていた。
ヘッドホンから漏れる音楽は、激しいロックミュージックで見た目とのギャップに驚いた。
どうして自分がこんなにも彼の事を考えているのか分からない。
ただ、私が聞こえない世界に耳を塞ぐ彼が妙に気になった。
不意に隣りの席から突かれて我に帰る。
振り向けば、クラスメイトの女の子が焦った様に前を指差した。
背中に妙な寒気を感じて、そちらを向けば男の先生が苛々した表情で私を見ていた。
“俺の授業中に何をボーッとしている!”
声色が分からないものの、厳しい顔にビクッとする。
「す、すいません…。」
先生は厳しい視線を1度見せると授業を再開した。
私は隣りの席の子にコソッとお礼を言った。