君の声が聞きたい
視線を空から外せば、20メートル程前を女子生徒が4人歩いていた。
そのうちの3人が道をはずれて、駅じゃない方に曲がって行く。
恐らく寄り道だろう。
ただ、1人残った女子生徒は少し寂しそうに手を振っていた。
…用事、か?
その時、再び強い風が吹いた。
女子生徒の腰まである黒髪が靡く。
彼女は咄嗟に、左の髪を押さえた。
こういう時、髪が長いと大変そうだな。
俺は無感情にそんなことを考えながら、風により顔にかかった髪を無造作に退けた。
そろそろ伸びてきた髪が邪魔になる。
切り時…、かもな。
横を車が2台抜かしていった。
そんなに広くない道幅は、車が来るときはすこし横に避けなければ結構危ない。
俺は、ポケットに手を入れると音楽プレイヤーの音量を僅かに下げた。