君の声が聞きたい

ベッドに体を投げ出した。
数秒遅れて、ボフッと音を立てて俺の横に鞄が落ちる。
なんなんだよ、あの先輩…。
俺を見る目は真っ直ぐで、決してわざと避けなかったという感じじゃなかった。
訳わかんねぇ。

仰向けになって音楽プレイヤーに触れた。
音量を、音漏れするくらいまで上げてやる。
何も聞きたくない。
何も考えたくない。
キツく目を瞑り、視界からの情報も遮断した。

いっそ、俺の気分が悪くなるほど嫌な奴なら良かった。
あんな人おれの前には今まで居なかった。
見てるだけなら、自己中に見えたのに喋る言葉や瞳はどこまでも真っ直ぐで。

人間は、必ず何処かに黒い部分を持ってる生き物。
それは、俺も同じ。
持ってる量だって変わらない。
唯一違うのは、それを表に出すかちゃんと自力で始末出来るかの違い。
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