君の声が聞きたい
後ろをちらりと振り返れば、もうさっきの生活指導の先生はいなかった。
この学校は、2・3年生に対する指導が甘い。
1年の時はかなり口煩くどの生徒も指導を受けるが、進級してしまえば後は放任される。
それを知っていたからこの学校を受験した。
1年の時はかなり窮屈ではあったが、それなりに真面目に過ごした。
“それなりに”と言うのは俺の耳に大音量の音楽を流す、このヘッドホンだけは頑として取らなかったからだ。
このヘッドホンだけは、外せない_______。
俺は、下駄箱で靴を変えると教室には目もくれず鞄を持ったまま屋上に向かった。
当然ながら屋上の鍵は閉まっているが、扉の左側に山積みになっているダンボールの後ろに窓と人が1人通れるくらいのスペースがあるのを知っている俺はそこから屋上に出る。
その時、音楽の陰に始業を告げるチャイムの音を聞いた。
だが、構わず扉の横の壁に凭れかかるように座る。
所謂、サボりというやつだ。
当然、先生に見つかれば怒られるのだが鍵のかかった屋上にわざわざ見回りに来る先生はいない。
出席日数に関しては、1年に比べれは緩くなるもののある程度は出なければならない。
が、危うくなるまでサボるほど俺も考え無しではない。