君の声が聞きたい

なのに…。
ヘッドホンのあの男の子。
今日会うのが、購買でぶつかってからの2回目だなんて思ってもいないだろう。
トラックが来た時、助けてくれた。

言動は乱暴だったけど、表情は困惑してた。
何で助けたのか、何で苛々してるのか分からない、そんな顔。
彼に怒鳴られた時、ヘッドホンからは音は漏れていなかった。


“あんた、何考えてんの?死にたいの?それとも、本気で気付いてなかったとか言うつもり?”


冷たい瞳に私は嘘を吐いた。


「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて…。ただ、考え事をしてて本気で気が付かなかったの。」


考え事なんてしてなかった。
寧ろ、かなり警戒してた。
それでも、本当の事なんて言えなかった。

去ってく後ろ姿を見送ることしか出来なかったんだ。
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