君の声が聞きたい

「折角喋ったんだし、名前くらい聞いとけば良かったな…。」


1人、ポツリと呟いた。
何で、助けてくれたんだろ…?

最後の彼の言葉が、心に刺さる。


“考えごとなら家でしろよ。あんた、そんなんだといつか死ぬよ?”


耳が聞こえない事で、不自由は山ほどある。
車だけじゃない。
電車もそうだ。
耳が聞こえない事は、情報が遅れてしか入ってこないという事。
健聴者からしたら、電光掲示板があるから不自由は無いと思われがち。
だけど、その認識が間違いなんだ。

例えば、電車が何らかの理由で急停車する。
健聴者はアナウンスで直ぐに情報を手に入れられるが、私は分からないんだ。
電光掲示板には、肝心な時に肝心な事を表示してはくれない。

これが、大きな災害が起きたとしたら?
そう考えると、怖い。
耳が聞こえないというハンデだけで、途端に危険が増える。
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