君の声が聞きたい
「うん。」
私は少しだけ笑って見せた。
「私は、3年2組の横山優莉。よろしくね。昨日はありがとう。」
彼は私の顔をジッと見る。
何か考えるような、探るような、そんな目。
私は少しだけ首を傾げてみる。
彼は、前を向いて息を吐いた。
“2年1組、荒城蓮です。”
それだけ言って、荒城君は口を閉ざした。
何処か近寄り難いオーラを感じる。
背中を向けられてないのが幸いだ。
背を向けられたら、会話が出来ない。
“先輩、此処に居て良いんですか?チャイム鳴ってますよ?”
荒城君がこちらを見ないまま口を動かす。
腕に付けた時計を見れば、始業開始ベルの鳴る時間だ。
もっとも、私にその音は届かないが。