君の声が聞きたい

私の言葉にピクッと眉を動かした。
表情は無。
でも、静かに彼の中に怒りの感情が湧き上がっているのを感じた。

もしかして、不味いことでも言った…?
不意に不安が全身を駆け巡る。

不快だという様な表情で睨まれた。
冷たい眼差しに、息を飲む。
ピリピリした雰囲気が私の呼吸を浅くする。


“世の中に溢れてんのは、素敵な音だけじゃないですよ。その、何十倍何百倍と不快なっ…。”


彼はそこまで言いかけて、ハッとしたように口を噤んだ。
苛立った表情で舌打ちしたのが分かった。

私は荒城君の迫力に動けない。
何か喋ろうとしても言葉が出ない。
ただ、彼の中の触れられたくない事に触れてしまったことだけは分かった。
私の中に、触れられたくない事がある様に…。


“先輩には、関係の無い事です。”


荒城君はそれっきり、本当に口を閉ざした。
彼の手が制服のポケットに触れる。
微かに激しいロックサウンドが聴こえた。
音量を上げたのだろう。

この意味は、拒絶…。
彼のヘッドホンから聴こえる音楽が、彼の代わりに叫んでいる様に聴こえた。
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