君の声が聞きたい

「ごめんなさい…。」


荒城君にこの言葉は届かないと分かっていても、私は1人呟いた。
勿論、彼の反応は無い。

私は踵を返すと、元来た窓から校舎に戻った。
まだ、授業が始まって1限の半分くらいまでしか時間は経っていない。
段ボールの間をすり抜けて階段の前まで来ると私は腰を下ろした。
今戻っても、途中で見回りの先生に見つかって怒られる。
腕に付けた時計が、1度終了の時間を指すまでただボーッと座り続けた。


2限が始まる前、教室に戻ればいつものメンバーが駆け寄ってきた。


“優莉、どうしたの!?”

“優莉が何にも言わずに遅刻なんて今までなかったじゃん!大丈夫?”

「あ、うん、大丈夫だよ。」


皆の心配してくれる顔に、さっきの事を思い出して苦しくなりながらも笑顔で誤魔化す。
席に着けば、時機に2限が始まった。
屋上を見上げれば人影が見える。

荒城君、どうしてそんなに苦しそうなの…?

私の中に再び疑問が浮かぶ。
さっきの彼の表情を思い出して、私は切ない気持ちになった。
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