君の声が聞きたい
「あの先輩、お前に声をかける時いつも1人だよな。」
伸也が俺の顔を見ながら、コンビニで買ったおにぎりを頬張っている。
先輩が校内でも俺に声をかけるから、伸也も先輩の事を知っている。
初めて伸也と先輩が会った時、出会った経緯を伸也に問い詰められた。
「そうだっけ?」
嘘だ。
俺も少し前にそれは気が付いた。
屋上からたまに先輩を見付けることがある。
その時は大抵誰かと楽しそうにしているのに、教室以外では1人でいるところをちょこちょこ見かける。
「嘘吐くなよ〜。」
伸也が意地悪く笑っている。
「知るかよ。あの先輩がどうだろうと、俺には関係ねぇし。」
「釣れないねぇ〜。」
伸也は屈託無く笑う。
コイツの目と、あの先輩の目、似てるんだよな…真っ直ぐなところが。
最初は伸也の事、苦手だったっけ?
欲にまみれた人の目ばかり見てきたから、純粋な目をしてる奴をみるとどうして良いか分からない。