君の声が聞きたい
「あの先輩、お前に気があるんじゃないの?」
サラリと放たれた言葉に噎せる。
普段こんなからかわれ方をしたことが無かったから思わず動揺した。
驚いた伸也が顔を顰める。
「おい、大丈夫か?」
「ケホッ、悪りぃ。大丈夫。」
差し出されたお茶で落ち着くとため息を漏らした。
「そんなんじゃねーよ、…多分。」
「ふーん。」
自分で振っときながら、興味を無くしたような返事に少しホッとする。
あの先輩の瞳は、そんな好意を寄せているような感じのものではない。
単に興味があるだけだ。
不意に窓の外に視線を向ける。
視線の先は無意識に先輩の教室だった。
階の違う先輩のクラスは、この教室からは見上げる形になり中は見えなかった。
…って、何で俺こんなに気にしてんだろ?
俺は窓の外から視線を外した。
その一部始終を伸也が見ていたのには気付かなかった。