君の声が聞きたい
そう思った時、扉の内側に人の気配を感じた。
誰だ?
ジッと気配を殺して様子を窺っていると、その人物は俺と同じルートで屋上に入って来た。
「よぉ。やっぱり、ここにいたか。」
爽やかな笑みで登場したのは、長谷部伸也 hasebe shinya。
ルックスはそこまで悪くない。
175センチと男にしてはまずまずで、長過ぎず短すぎない髪型が好印象を与える。
数少ない、俺の友達と言える奴だろう。
高1で同じクラスになり、何故か今年も同じだった。
伸也は少し変わった奴だと思う。
入学時からヘッドホンをし、クラスに馴染もうとしない俺に毎日毎日絡んできた。
俺といて飽きないのかと聞けば、素で“なんで?”と聞き返された。
「2時間も俺に無断でサボるなよ〜。」
「何で伸也にいちいち許可取らないといけないんだよ?」
1度長く息を吐いてから、俺は音楽プレイヤーの音量を少し下げた。
「って、顔色悪いけど大丈夫か?」
ふと気付いた様に俺の顔を覗き込む伸也に、大丈夫と生返事をするともう1度壁に凭れかかった。