リナリアの王女2
 『クラウド様と結婚をする事が不安ですか?』
責めているわけではなく、私の気持ちを確かめたいというように優しく聞いてくれる。
「正直に言うと、結婚はまだ現実味がなくて・・・」
『現実味、ですか』
「そんな私が大事な色のドレスを着ても良いのか不安なんだ」

好きと愛してるでは大きな違いがあるだろう。
クラウドは私の事を迷わずに愛してると言ってくれた。

でも私がクラウドに抱いている気持ちはまだ、愛してるではなく好き、だ。


『クラウド様は早く皆様にエリーゼさんを紹介したいのだと思いますが・・・エリーゼさんの気持ちが追いついていないのですね』


追いついていない・・・まさにその通りだ。
私の気持ちはずっと置いてけぼりをだったんだ。
私自身も気付かないうちに。

『エリーゼさん』
サラちゃんが真剣な顔をして私の名を呼んだ。

『エリーゼさんが言った通り、披露宴のパーティーで紫色の衣装を着てしまえば、結婚から逃れる事は出来ません。この城に、クラウド様に仕える者として失格ではありますが、私はエリーゼさんの意見を、気持ちを尊重したいと思います。まだ戴冠式まで時間があります。今一度、しっかりとご自分の気持ちと向き合って下さい』

サラちゃんはなんて優しいんだろう。
この世界に来てサラちゃんには迷惑しか掛けていない。
そんな私に懲りずに向き合ってくれる。
「でも・・・私がクラウドと一緒にならなければ、クラウドは国王になれないのでしょう?」
私の我儘でクラウドの人生を狂わせてしまいたくはない。
大切な人だ。
幸せになってほしいと思う気持ちは嘘ではない。

『確かに、そうですが・・・クラウド様もエリーゼさんの気持ちを無視してまで一緒になりたいとは思わないと思います』
きっぱりと断言したその言葉。
「うん、そうだね」
彼はそういう人だ。
何よりも私の事を一番に考えてくれている。
『エリーゼさんにとってクラウド様が大切な人である事は私でも分かります。ですが、確かに結婚となれば簡単に決断出来るものではないでしょう。エリーゼさんがしっかりと考えて決めた事でしたら私は反対致しません』
「分かった。もう一度、真剣に考えてみる」
『ではそれまではパーティーの準備はお預けに致しましょう』
「迷惑掛けてばっかりでごめんね」
『迷惑だなんて思った事はありません』
素敵な笑顔でそう言ってくれたサラちゃん。
彼女にも幸せになってもらいたい。
でもその前に自分の事だ。




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