心の恋愛事情
出発前日。
私と祐は最後のデートをした。
夜の8時、いつもの分かれ道の手前。
「どうする?直で帰る?」
「あ、うん。時間も時間だし。明日早いし」
「あー…、だな」
「ん。じゃぁね、明日からお互い頑張ろうねー!!」
私がそう言って角を曲がろうとした時、あっ…という祐の声が聞こえた。
「何?」
私は一旦止まり、祐の方を振り向く。
祐が何かを言いたそうにしていたので、私は自転車ごと向きを変え祐と向かい合った。
祐は私を呼び止めたことを少し後悔しているようだった。
しかし次第に後悔というより、恥ずかしがっているようにも見えてきた。
―――もしかして…?
ふと私の頭の中にある考えが浮かんできた。
この恥ずかしがり方は…
『キスしよう』とか言う気…?
我ながらあっぱれな思考回路だとは思う。
でも、目の前にいる祐を見ているとどうしてもそうとしか思えなかった。
しばらく沈黙が続いた後、祐が意を決したように口を開いた。
「あー…アレだったら、聞き流してもいいけん」