俺様常務の甘い策略
「もう勝手にすれば!」

少し切れ気味に言って自分の部屋の郵便受けの蓋の裏側に張り付けてある鍵を慣れた手つきで手探りで取れば、藤堂の表情が何故か険しくなった。

そんな藤堂を放っておいて、私は一階にある自分の部屋まですたすたと歩き鍵を開ける。

何だろう?

背後から身体が瞬間冷凍しそうな程冷たい冷気が漂ってくるような……。

後ろにいる藤堂を振り返るのが怖い。怒ってるような気がする。

「お前ってもうちょっとしっかりしてると思ったけど、意外と馬鹿だったんだね」

私の許可を得ずに藤堂が私が入るより先にスタスタと勝手に部屋に上がり込むのを見て、私は小声でぼやいた。

「良いとこの坊っちゃんなんだからお邪魔しますくらい言え」

最近、仕事が忙しくてただ寝るだけの部屋になっているから散らかってはいないが、藤堂に上がられるのは嫌だ。

とてもじゃないが、セレブに見せられる部屋ではない。
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