俺様常務の甘い策略
「もう、とうどう……いたい……」

馬鹿って何よ、馬鹿って。

それに、父親にだってつねられた事ないんだからね。

「秋月が本当に女って自覚がないのがよくわかった。こんな台風で吹き飛びそうなアパートの一階……しかもシャワーが共同?変質者に襲われても文句言えないよ」

「もう六年も住んでるけど襲われた事なんてないわよ」

胸を張って自慢気に言い返せば、藤堂は私の頬を放して鋭い眼光で私を睨み付ける。

「単に運が良かっただけ。そこにあるスーツケースに当座の服と必要なもの詰めて」

「はあ?何でよ?」

何であんたにそんな命令されなきゃいけないんだ。

「ここにこれ以上住まわせる訳にはいかない」

住まわせるわけにはいかないって……何様よ!

だいたい貯金がないから引っ越せないし、ここを出たら家なき子になっちゃうわよ。

両親だってお金がないなら仕方がないって納得するはずだ。

「藤堂が住む訳じゃないからいいじゃない?あんたに迷惑かけてないわよ」

口を尖らせて藤堂に反論すれば、こいつは腕組みして私を見据えた。
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