俺様常務の甘い策略
「俺に心配かけるのがわからないかな?」

静かな怒りに燃えるその双眸。藤堂の苛立ち、怒りが私に伝わってくる。

綺麗な奴が怒ると凄みが増す。

でも……何で怒るのよ!わけがわからない。

いくら一晩一緒に寝たからって、恋人じゃないのに……。

「上司がそこまで心配する必要はないわよ。私の私生活にまで干渉しないで。あんたには関係ない」

あえて一緒に寝た話には触れず、壁を作って藤堂を遠ざけようと試みる。

「時間がないし、シャワー浴びたいの?もう帰って」

藤堂から目を逸らしスーツのジャケットを脱ぐ。

視界からこいつを追い出せば少しは落ち着けると思った。だが、こいつはそれを許さなかった。

藤堂は私の両手をつかんで壁際に追い込む。

「と、藤堂……離してよ」

藤堂にこうされてしまうといつのも調子が出ない。

必死に振りほどこうとしても、こいつの力が強くて出来ない。

何で私に構うのよ!

藤堂の厳しい目が再び私を捕らえる。
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