俺様常務の甘い策略
浴衣ね。ジョージも日本は好きだし、きっと喜ぶだろう。

秋月のこういう気遣いは嬉しい。

ジョージもこいつに会ったらきっと気に入るだろう。

「なるほどね。ありがとう。ジョージもきっと喜ぶと思うよ」

「良かった。じゃあ、明日手配するわ」

「いや、浴衣の手配は俺がやるよ。実家でひいきにしてる店があってね」

俺は秋月に向かってにっこり微笑む。

こいつの提案で良いことを思い付いた。

「さすがお坊っちゃん!」

秋月が感心したように声を上げるが、俺は苦笑した。

「……その言い回し、嬉しくないんだけど」

褒められてる気がしない。

実家が裕福なお陰で何不自由なく暮らしてきたけど、俺はそれを良しとは思わなかった。

人が俺に媚びへつらうのも、俺が藤堂家の子供だから。

そう思うと素直に喜べない。

親父は俺が政治家になることを望んでいたが、俺は政治家にはならなかった。すでに兄が政治家になる道を選んでいたし、俺が同じ道を選んで兄を困らせたくはなかった。親父の地盤を継げるのは一人だ。兄弟で争いたくはない。
< 147 / 299 >

この作品をシェア

pagetop