俺様常務の甘い策略
藤堂の言葉に私は思わず絶句する。

上司……。

確かに藤堂はそう言った。

でも、今は六月。

人事異動の時期ではないし、上司から藤堂が赴任してくる話なんて聞いてない。

それに、私は社長秘書だ。

私が事前に何も知らされないなんてありえない。

「人をからかうのもいい加減にしなさいよ!」

「からかってはいないよ。風間物産の社長の風間隆行が俺の母方の祖父って言ったら信じてくれるかな?」

社長の孫が藤堂だあ?

寝耳に水の話に、口をあんぐり開けたまま言葉を失う。

そんな私の様子を面白そうに眺めながら、藤堂は悪魔のように妖艶に微笑んだ。

「これからまた宜しく頼むよ、秋月」

私の顔から血の気が引いていく。

逃げ場がないように私の周囲に蜘蛛の糸が綿密に張り巡らされていくような感じがするのは気のせいだろうか。

またこいつの奴隷になれっていうの?

すごーく嫌な予感がした。
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