俺様常務の甘い策略
「あれは……突然でびっくりしたから……」

うつ向きながら言い訳するが、歯切れが悪い。

「顔赤くなって来たけど、昼間のキス思い出した?」

俺がニヤリと笑うと、秋月はムキになって否定した。

「あんなの忘れました!」

あんなのねえ。しっかり覚えてるじゃないか。

「そう?お酒も飲んでないのに赤くなるのはおかしいね」

俺がクスクス笑うと、秋月はばつが悪くなって黙り込む。

「じゃあ、お腹も一杯になった事だし、帰ろうか」

「帰る……あっ……」

ようやく俺の家に泊まることを思い出したのか、秋月の動きがピタッと止まる。

「そう、俺の家へ」

焼き肉の支払いを済ませて、秋月の手をつかんで駐車場に向かう。

だが、秋月は急に立ち止まった。

「ねえ、やっぱり悪いから自分の家に帰る。藤堂の家と比べたらセキュリティーなんてないようなものだけど、あれが普通よ」

「その話は朝、決着が着いたはずだよ。あんな危ない場所に帰すわけにはいかない」
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