俺様常務の甘い策略
その姿を見届けると、私は壁にもたれ掛かった。

「……このやり取り、これから毎日やるの?」

朝からどっと疲れが出る。

私の平穏な日常はどこへいった?

シャワーを浴びてすっきりした後、喉が渇いてダイニングに向かうとお味噌汁のいい匂いがした。

インスタントじゃないお味噌汁。しかも、この匂いは……。

「赤だしだあ」

匂いでお腹が刺激されたのか、私のお腹がぐうと鳴る。

「買い物に行ってないから冷凍の焼おにぎりと味噌汁だけだけど 、早く食べちゃって。食べたら買い物に行くよ」

藤堂が私に向かってにっこり微笑む。

……私は行くとは言ってないんだけど……。

でも、目の前の美味しそうなご飯の誘惑に負け、渋々了承。

近くのデパートにでも行くのかと思えば、車で一時間もかかるショッピングモールへ。

藤堂の運転する車に乗ってる間、寝不足の私はずっと助手席で寝ていた。こいつが運転しながら「警戒心ゼロだね」と呟いていたとは知らずに。

「近くのコンビニでも良かったのに……。人が多いとこって苦手なんだよね」
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