俺様常務の甘い策略
着いた場所を見て私がムスッとしながら不平を言えば、藤堂は私の手をつかんでニコニコしながら歩き出す。

「せっかくここまで来たんだから、楽しもう」

「ちょっと、手を繋ぐ許可なんて与えてませんけど」

「沙羅って意外とボーッとしてるから迷子になりそうだし、迷子で呼び出されたくないでしょ?」

あんたみたいな目立つ奴を見失うわけないじゃない!と反論したいところだが、藤堂に手を離す意志がなさそうなので諦めた。

まだ寝足りないし、これ以上騒いで体力を消耗したくはない。

仏頂面で藤堂に手を引かれるままモールの中を歩けば、映画館の前でこいつは立ち止まった。

え?何で?

「食料品は?」

私が不思議そうに藤堂の顔を見上げる。

「それは最後。映画最近観てないんだよね、付き合ってよ」

「何で私が?待ち合わせ時間決めて別行動した方が良くない?」
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