俺様常務の甘い策略
一緒に映画なんてまるでデートじゃない。

「今やってるこの映画、昔沙羅が好きだって話してた俳優さんが出てるけど、観たいと思わない?」

藤堂がすぐ側の映画のポスターを指差す。

そこに写っていたのは私が高校時代に大好きだったアメリカのイケメン俳優、クリス・ガーナー。今ではすっかり演技俳優になって、この映画『月からの伝言』で今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞。

同僚を月で亡くした落ちぶれ宇宙飛行士が、その同僚の意志を継いで再び月へのミッションを目指す感動ストーリーだ。

DVDになったら借りて見ようと思ってたんだけど……。

このチョイスは悪くない。

「うむむ……」

藤堂に下の名前で呼ばれた事を突っ込むのも忘れて私は悩む。そんな私を見てこいつはフッと笑った。

「決まりだね」

……何か上手く丸め込まれたような気もするが、まあいっか。

私が席に座ると、藤堂は椅子に座らずに着てきたジャケットを椅子の背もたれにかける。
< 167 / 299 >

この作品をシェア

pagetop