俺様常務の甘い策略
「もう俺、十戦全勝してるんだけど」

「そこを何とか。一勝くらいしてから帰りたい」

私は藤堂に向かって手を合わせて拝む。

「そこまで言うなら。但し、俺が次も勝ったら一つお願い聞いてもらうよ」

藤堂が企み顔で微笑む。

何となく嫌な予感はしたけど、私のプライドにかけて一勝はしたい。

私は藤堂の目を見て頷くと、アタッカーを強く握った。

「了解。本気でやってよ。さあ、来い!」

「もちろん」

藤堂が不敵の笑みを浮かべながら、パックを打つ。

何回ラリーが続いたのだろう。

気づいたら私達の周りにはたくさんのギャラリーがいた。

最後は集中力の差だったかもしれない。

私の守りが上手くいかなくて、パックは私のアタッカーをかすったが健闘虚しくそのままゴールに吸い込まれた。

負けた……。

完全なる敗北。でも、何故だろう。不思議と悔しくはない。気分は爽快だ。
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