俺様常務の甘い策略
俺もソファーから立ち上がると、デスクの上の電話の受話器を取って沙羅に内線をかける。

朝、バタバタしていて家のスペアキーを渡せなかったので、彼女を呼んで渡そうと思った。

スーツのポケットから鍵を取り出して、指でくるくる回しながらもてあそぶ。

『はい、秘書室です』

電話に出たのは、沙羅ではなく専務秘書の鈴木さんだった。

「藤堂だけど、秋月いる?」

『それが……今日はもう社長も帰りましたし、秋月さんも定時後にすぐに帰りました。郵便物がどうのこうのとか言ってましたけど……。何か急用ですか?』

「いや、大丈夫。ありがとう」

すぐに内線を切って持っていた鍵をデスクの上に置くと、側に置いておいたスマホをつかんで沙羅に電話をかける。

だが、三回かけて三回とも留守番電話サービスに繋がった。

「郵便物って事は……きっとあのボロいアパートに帰ったんだろうな」
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