俺様常務の甘い策略
私はギュッと目を閉じて呟くと、唇をギュッと噛み締める。

全てを諦めた時、あいつの声が耳に届いた。

「何泣いてるの?」

幻聴かと思ったけど、目を開けると颯介がいて、空き巣男の手を捻り上げてナイフを取り上げていた。

ううっと男が呻き声を上げる。

嘘……。

颯介が私に電話をかけてきたのはほんの数分前。

てっきり会社からかけてきたのかと思ったけど……近くからだったんだ。

助かった……。

急に力が抜けて私は床にくずおれた。

気づけば空き巣男は後から来たお巡りさんに連行されていくところだった。

「沙羅」

颯介は私に近づいて私の名を呼ぶと、私の身体をギュッと抱き締めた。

「良かった、無事で」
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