俺様常務の甘い策略
「……死ぬかと……思った」

私は颯介のスーツのジャケットを掴み、こいつの胸の中で堰を切ったように泣きじゃくる。

強がるとか、恥ずかしがるとかいう考えはなかった。

そんな私に颯介は何も言わず、ずっと私の髪を優しく撫でていた。

人の温もりがこんなにホッとして、こんなに温かいって感じたのは初めてだった。

颯介がいてくれて良かった。その存在に安心する。

いつの間にこんなにこいつに心を許していたのだろう。

こいつの腕の中が一番安全だって……こいつがいれば怖くないって……自分が颯介を求めてる。

私が落ち着くと、颯介と二人、警察に一時間程事情を説明。

お巡りさんには「無茶をせず、警察にすぐに知らせるように」と長々と説教された。事情説明の半分は説教だったと思う。

「何で……私が怒られるの?悪いのはあの変態空き巣じゃない」

私がそうぶつぶつ文句を言うと、横にいた颯介にギュッと頬をつねられた。

「うっ……痛い‼颯介……離してよ」

「少しは反省してよ。また無茶したら首輪で繋ぐ」

怖い目をして颯介が怒る。

怖い……。いつもに増して怖い。

こいつなら本気でやりそうだ。

「首に傷までつくって……」
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