俺様常務の甘い策略
「颯ちゃーん」

和服姿のお袋が玄関から出てきて、俺に向かって手を振る。

「あの和服の美女はひょっとして……」

お袋の姿をみた沙羅がぎょっとした表情になる。

「そう。俺のお袋。もう見つかっちゃったし、観念したら?」

俺がフッと微笑すると、沙羅は頭を抱えて項垂れた。

「ああ……もう勘弁してよ」

「大丈夫。俺がいるし。さあ、降りるよ」

俺が先に降りて助手席の方に回り込んで助手席のドアを開けると、お袋がやって来た。

「颯ちゃん、そのお嬢さんは?」

「紹介するよ。俺の結婚相手の秋月沙羅さん。来週から俺の秘書をやることになってる」

俺は沙羅に手を差し伸べて彼女を車から降ろすと、彼女の腰に手を当ててお袋に紹介した。

「秋月……あっ、高校の時に生徒会の副会長だった?」

沙羅の名前に聞き覚えがあったのか、お袋は目を輝かせる。
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