俺様常務の甘い策略
この状況についていけないのか、それともお袋のキャラに驚いているのか……。

多分、両方だな。

「母さん、ここで話すのもなんだから、中に入らない?親父、いるんだよね?」

「ええ。居間でニュース見てるわ。沙羅さん見たらきっと驚くわよ」

お袋がフフっと楽しそうに笑う。

今にも逃げ出しそうな沙羅の手を握って、家の中に入る。

ここに帰るのは三年ぶりだ。

イギリスかぶれの祖父がイギリス人の建築家に依頼して建てたこの洋館は、百年近い歴史があり神戸の異人館に似た趣がある。中を改築はしているが、外観は昔と変わらない。

居間に入ると、親父はソファーに座っていて、タブレットを操作しながらニュースを見ていた。

俺に気づいた親父が、俺達に目を向ける。

「颯ちゃんが、結婚相手を連れて来たのよ」

お袋が親父に明るく声をかけるが、親父の顔は無表情だった。
< 230 / 299 >

この作品をシェア

pagetop