俺様常務の甘い策略
「藤堂定治だ。まあ、かけなさい」

ぶっきらぼうにそう言うと、親父は沙羅を厳しい視線でじっと見据える。

「は、初めまして。秋月沙羅です。今日は突然お邪魔してしまってすみません」

相当緊張しているのか、沙羅の声は珍しく震えていた。

「どうせ、そこの愚息が何も言わずに君を連れて来たのだろう?」

冷ややかな口調。ピリピリした空気が部屋の中に流れる。

この人は相変わらずだな。

思わず溜め息をつきたくなる。

俺が政治家にならなかった事をまだ根に持ってるらしい。

取り敢えず沙羅を紹介したし、このまま帰るか?

義理は果たした。親父が何を言おうが沙羅と結婚する意志は変わらない。

ジョージに言われたから来たが、親父がこんな態度ではこれ以上の長居は無用だろう。
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