俺様常務の甘い策略
田中さんも渡辺の担当になってから、意欲的に仕事をするようになったし、ちょっと表情も柔らかくなったし……。

渡辺と田中さん……いいコンビになるかもしれない。

「まだ彼女にやらせるのは無理なんだよ。こんなの出来るの秋月ぐらいだろう?俺も忙しくてな。秋月が頼りだ」

渡辺も無責任過ぎる。

「……絶対やらない」

私はフンとソファーにふんぞり返り、脚を組んで突っぱねる。私は便利屋じゃないのよ。

「時間は作るものよ、渡辺」

目を細めて睨み付けつるように渡辺に言えば、こいつは溜め息をついて隣にいた颯介の肩をポンと叩いた。

「バトンタッチ」

リレーかよ。何がバトンタッチだ。

私を説得出来ないんだから素直にお前がやれ。

「沙羅がやらないと、資料が間に合わないんだよね。俺と渡辺は明後日からアメリカ出張でアダムス石油の本社と支社を回る。その為の打合せ資料も作らないといけない。社内講演がアメリカ出張から戻った翌日だから、作る暇ないの沙羅ならわかるよね?」
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