俺様常務の甘い策略
何だろう。普段、颯介の邪気のある笑顔ばっか見慣れてるせいだろうか。この自然な笑顔を見ると心が和む。

「今日は打合せでいらしたんですか?」

私がにっこり微笑みながらそう尋ねると、和久井さんはコクリと頷いた。

「はい。営業と一緒に新薬の説明に。一ヶ月振りですね。もし、仕事がすぐに終わるようなら一緒にお食事でもどうですか?」

食事……。

それってデートかな?変な気を持たせるのは悪いよね?ただの知り合いとしてならいいんだけど……。

それに、颯介に知られたら後でネチネチ言われそうな気がする。奴の悪魔な顔が浮かぶ。

「……ごめんなさい。今日はちょっと仕事が溜まってて。またの機会に」

作り笑いを浮かべ、屈んで床に散らばったガラスの破片を拾うと、誤ってその破片で指を切った。
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